捻挫してしまった直後に包帯やテーピング、アイシングをした経験はありますか?
医療機関へ行く前に行う応急処置の基本となるのがRICE処置です。
靭帯の断裂があると内出血したり、組織の炎症が起こってきます。冷やすことや圧迫することによってをなるべく血流を抑えること、急性期にやるべきRICE処置のIとcです。
急性期は、受傷から3日間位のことを言います。

この考え方はPRICEというものに進化しました。
加えられたPは、Protection:固定です。ギプスとか添え木などをあててから包帯などを巻いて、患部をなるべくうごかないようにします。
さらに進化してREST(安静)をやめて、早期から適当な負荷(Optimal Loading)をかけた方が回復を早めるということでPOLICEになりました。
そして最近は、その後のリハビリまで含んだ、PEACE&LOVEという言葉がでてきています。
P (Protection) 保護
E (Elevation) 挙上
A (Avoid anti-inflammatories) 抗炎症薬を避ける*
C (Compression) 圧迫
E (Education) 教育 最適の対処法を教え、不必要な受動的療法を避ける
&
L (Load) 負荷 徐々に負荷をあげる
O (Optimism) 楽観思考 前向きな考え方をする
V (Vascularisation) 血流を増やす 有酸素運動を取り入れる
E (Exercise) 運動 筋力、自己受容性感覚、体の動きなど
*非ステロイド系のいわゆる痛み止め、イブプロフェンやアスピリン等
Ice(冷却)が除かれました。アイシングは研究が重ねられていますが、確実に効果があると言う証明がないそうです。それと、過度なアイシングは、組織の固着を起こしてしまい、逆に治りが悪くなるケースもあるそうです。急性期のアイシングは、腫れがひどかったり、色が赤(黒い)とか、ズキズキするような痛みがある場合はした方が良いと思いますが、そういった症状がおさまってきたら、3日間ずっとする事はないと思います。
Avoid anti-inflammatoriesー痛み止めの抗炎症薬をなるべく避け、Educationー正しい知識を学んで、最短で治していくことが追加されています。
RICE, PRICEは、受傷直後急性期(0~3日)の対処で、POLICEは、その後の亜急性期(4~10日)までを含めています。
さらに、PEACE & LOVEは、急性期、亜急性期、回復期(11日~)まで含めた考え方といえます。
1,炎症期 | 0~3日 | 安静時痛 腫脹 内出血 部分荷重 | 足部、足指運動 |
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2,増殖期 | 4~10日 | 腫脹軽減 部分荷重 運動への恐怖感 | 足関節可動域訓練 安定性、協調性 歩行、日常生活活動 |
3,リモデリング 前期 | 11~21日 | 内出血 歩行正常化 ADL中の痛み、恐怖 | 早期荷重、バランス 足関節可動域訓練 腫脹でない範囲で負荷を上げていく 自宅エクササイズ |
リモデリング 後期 | 3~6週間 | 内出血なし 底屈可能 運動中の痛み、恐怖 | ホップ・ジャンプを加える 運動療法の継続 自宅エクササイズ |
継続 | 6~8~12週間 | トレーニング |
Ⅰ度,Ⅱ度損傷ならば3日間位。Ⅲ度損傷ならば、10日間位このようなサポーターや、硬いテーピング、場合によってはシーネ(形の変えられる、ギブスのようなもの)で固定をしながら、運動はなるべく早い時期から行っていきます。

受傷後3日間は安静と治療に専念して、ごく軽い運動をします。決して無理はしません。
例:足の指を動かす
足首をちょっと動かす
関節モビリゼーション(治療院)
微弱電流治療
4日目から、少しずつ荷重をかけたり、足首をもう少し動かして行ったり、チャレンジをしていきます。固定は外して、動かしやすいテーピングに切り替えたりします。(Ⅲ度損傷は10日位まででは外せません)
例:つま先でアルファベットを書く
床に置いたタオルを足の指を使ってたぐり寄せる
つま先立ち、片足立ち
ストレッチなど
10日を過ぎたあたりから、筋トレやバランストレーニングをします。様子を見ながらオモリを持ちながらやったり、負荷をだんだんと上げていきます。
例:つま先・踵歩き
足の内側・外側を使って歩く
足首の背屈や内・外返し運動に抵抗をかける
階段を使ったつま先立ち
目をつぶって片足立ち
ストレッチ
21日頃から、スポーツをしている人は、復帰に向けて瞬発力を鍛える運動を追加していきます。
例:自転車
階段横歩き
ジャンプ
8の字走り
バランスディスクの上で、スクワット
左方向へのジャンプ
ストレッチ
回復度合いによって強度を上げていくのですが、目安は60%できればその強さでトレーニングを続けます。
10回スクワットやろうと思って6回できた。
20キロのお守りを持とうと思って12キロが持てた。
30秒間片足立ちをしようとして、18秒できた。
これはオッケーです。
でも運動の後に痛みが残ったり、腫れてしまったりすると、それはまだ強度が高すぎますので、落としたほうがいいです。
実際は、治療院で運動をチェックさせていただき、家で宿題としてやっていただきます。
捻挫をして傷ついたり伸びてしまった靭帯を放置すると、足首にかかる力を抑えきれず、そこから崩れて全身の歪みを生むパターンは多いと思います。靭帯の機能を回復させるのは、ある程度早期から負荷をかけること、バランスを戻すには運動が必要だと言われています。
この期間は、あくまでも参考ですので、実際の回復度合いを調べるために、このようなテストを定期的におこないます。

スターエクスカーションバランステストといいます。怪我をしている足で立ち、8方向に足を伸ばして元の位置に戻せるかと言うテストです。省略されたテストは、ワイバランステストといい、重要な3方向だけで行います。写真の青いラインのところです。
怪我をしてない足で立った場合と比べて、その距離が8割まで回復していれば、競技復帰できると言う目安になります。