内臓系の疾患をお持ちで入退院をされている患者様の、ご自宅での療養中に訪問施術に伺っております。
一番のお困りが、トイレに行くときに介助してもらったり、何とか歩行器を駆使して、行くのですが、足に力が入らなくなり、立っていることができなくなり転倒してしまったりという事がしばしばあるということです。
上部腰椎や骨盤のヘリに痛みがあり、痛みが強いときは、体位変換も困難で、ベッドサイドでの施術と運動をさせて頂いていたのですが、やっと立つことができるようになってきました。
このタイミングで一般的な腰痛の鑑別診断を行いました。
この患者さんのもともとわかっていたことは・・・
背中と腰のつなぎ目(胸腰移行部)と腸骨稜(腰骨の高くなっているところ)が痛い。
脚の痛みやしびれはない。
朝一番のトイレはなんとか行けるが、夕方くらいに行こうとすると一人では困難
立ってもらい上記の検査を受けてもらってわかったことは・・・
立位で骨盤が後継している。腰が引けていて、膝が曲がり前に出ている。
この姿勢を続けると、太ももの前側の筋肉が疲労してきて、耐えきれず膝がガクッと崩れてしまう。
抗重力筋(ローカルマッスル)が弱化している
前屈でも後屈でも痛い。プローンヒップテストができない。胸腰筋膜の滑走不全。
筋筋膜性か筋付着部性腰痛の可能性が高い。
鑑別診断のまず最初にやることは、動作時痛をみることです。
大きく分けると前屈と後屈でどちらが痛いかで、腰椎の前部か後部に問題があるかを鑑別します。この患者様はどちらも痛い状態でした。
つぎに圧痛(押して痛む)部分を調べます。この患者様は背中と腰のつなぎ目(胸腰移行部)と腸骨稜(腰骨の高くなっているところ)が痛いとおっしゃっています。
プローンヒップテスト(うつぶせで膝を床から離す)の時に背中と腰のつなぎ目(胸腰移行部)と腸骨稜(腰骨の高くなっているところ)が痛みが強くなる。
筋筋膜性か筋付着部性腰痛の可能性が高いと思いました。
ここから先は問診からの推論です。
朝一番は寝ていた状態なので、椎間板に水分が入っていてクッション性がある状態。重さを受け始めると水分が出て行ってしまう。それなので夕方とかのトイレ移動はキツイ。実際に朝よりも夕方には身長が低くなります。
長期間ベッド生活だったのでインナーマッスルが弱化している。
骨盤後傾が後継して、膝が前に出ている、いわゆるへっぴり腰なので、大腿直筋が疲労してしまい、支えられず限界が来ると膝がガクッと折れてしまう。
ではないか?と感じました。
体幹深層の筋肉は上の図でいう、腹横筋や多裂筋にあたります。ローカル筋やインナーマッスルと呼ばれるものです。これらは直接腰椎に付着していて、腰椎を一つ一つ動かしたり、安定させることができる、疲れにくく持続力のある遅筋です。
体幹浅層の筋肉は、広背筋や大殿筋、外腹斜筋や内腹斜筋にあたります。グローバル筋やアウターマッスルと呼ばれます。これらは肋骨と骨盤に付着部を持ち、腰を曲げたり伸ばしたり、側屈したり、捻ったりダイナミックに動かします。疲労しやすい白筋です。こういった筋肉が集まってできるのが胸腰筋膜です。
以上のことから、筋膜性の腰痛だと判断しました。椎間板の問題もあるかもしれませんが、足がしびれたりはしていないので、危険度の高い椎間板ヘルニアの可能性は薄いと思います。
治療は筋肉の付着部で固まってしまっているところを探し、リリースしてから、エクササイズを行いました。
腹横筋は天然のコルセットと言われる胴回りを囲む筋肉です。腹式呼吸で活性化させていきます。
次に多裂筋の活性化と胸腰筋膜の連動性をよくするために、ダイアゴナルツイストを行います。
実際には片手だけ、片足だけでやりましたが、すごくハアハアとなられておられました。
最後に、座骨を床に突き刺すように座り、頭は上から吊されているようなイメージ骨盤を立たせた状態をキープ。ひざ崩れ対策のために、そのまま膝を伸ばしてハムストリングスストレッチしました。
腰痛の原因が分かると、痛くても動かすことは、リハビリだと思って頑張ってくださっています。